●はじめに

去年、というか、前シーズンは自分としては初めて競技イベントに多く参加した期間で、毎週のように大阪周辺のPPTQを行脚していた。

あらためて前シーズンの大会参加履歴を参照してみた。
私は一三回のPPTQに参加し、そのうちで六回はSEに進出していた。一回が三没で、二回が二没、三回が一没だった。結局、RPTQへの参加権を得られなかった(=優勝できなかった)のだから、初シーズンの成績としては悪くない。

ほとんど毎週末をマジックに費やした以上の経験から、スタンダード攻略論なるものをまとめておきたい、と考えた。

すでに述べた戦績から察して頂けるはずだが、私は上級プレイヤーではない。せいぜい中の上がいいところ。しかし平均よりは上だ、とみなしても大きく間違いではない、と自分では思っている。

その程度のプレイヤーが書くものである。論と打ち出した以上、演説をぶつように断定口調になるかもしれないが、その辺はご容赦頂きたい。

●概要

スタンダードを特徴づけるのは、変化である。変遷と言ってもいい。
というのも、スタンダードは新エキスパンションが発売されるたびに、大きくメタゲームが変遷するフォーマットだ。ときには大きく変遷しないこともあるが、開発部が変化を望んでいる以上、メタゲームの変化は正常な化学反応だ。

プレイヤーはこの変化を正確に予測できない。できないからこそ、プレイヤーたちは新環境を手探りで少しづつ進めてゆく。現実でのコミュニケーションやネットでの語りによってや集団的知見が重なり、やがて環境の最終解が導き出される。スタンダードにおける変化とは、このサイクルの繰り返しに他ならない。

つまりスタンダードとはいわば、時間制限つきの謎解きゲームのようなものだ。

その期間はどれほどなのか?

それは以下の記事で指摘されている。

「スタンダードに禁止改定は必要なのか」
http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/3822

>2011年はおよそ環境終盤に差し掛かるまで3ヶ月ほどかかっていたが、2016年の『イニストラードを覆う影』は一ヶ月、『異界月』と『カラデシュ』は約3週間でほぼすべてのアイデアが出揃うことになった。カードプールの傾向の変化から強いデッキを導きやすくなったことも関連しているだろうが、これは異常な速度である。


長くみて一ヶ月。
これが現在のスタンダードに許された「謎解き期間」だ。
(謎解きゲームの時間制限が年々、短くなっているのは別の問題なのでここでは言及しない)

限られた期間内に、いかに早く強いデックを発見できるか? 

新エキスパンション発売後の一ヶ月の攻防は、以上の問いに対する各プレイヤーの取り組みによって織りなされる。

もしスタンダードに必勝法があるとすれば、環境末期に登場する「最も研磨されたトップデック」を環境初期に発見することだ。近年の例で言えば、回転翼機を採用した白青フラッシュであり、フェッチランド一二枚を採用したアブザンアグロだ。

実際、このふたつはプロツアーでもしっかりと結果を残した。プロツアー・カラデシュのスタンダード・ラウンドで九勝一敗以上の四人全員が白青フラッシュをプレイしていたし、プロツアー・戦乱のゼンディガーで優勝したのはアブザンアグロだった。

もっともメインボードの構成が数枚しか変わらないまま、環境初期のデックが環境末期まで居座りつづけるのはめずらしい例だ。
メタゲームは変化し、環境のデッキは進化してゆく。多くの場合、勝つのはもっとも環境の「先」にいるデックだ。

もう少し掘り下げてみよう。

現在のスタンダードでは、一ヶ月という謎解き期間の中で得意点と言えるイベントが三つ(正確には、+α)ある。

第一の特異点は、第一週時点で開催されるスターシティゲームス・オープントーナメント。
第一の特異点は、第二週時点で開催されるプロツアー、スタンダード部門。
第三の特異点は、第三週以降に世界各国で開催されるスタンダードのグランプリ。
これら以降はその後のグランプリやグランプリに準ずる大規模大会が、第四、第五の特異点として機能し、謎解きゲームは終局に向かう。

仮に環境末期にあるトップデックの点数(=完成度、強さ指数)を一〇〇点だとしてみよう。
すると第一の特異点(=スターシティゲームス・オープントーナメント)で発表されるのは、四〇点から五〇点の答案といったところだろう。つづく第二の特異点(=プロツアー)で発表されるのは、七〇点~八〇点(例外的に九九点級の答案が出現する)だろう。このプロツアーで環境の全容が明らかになるため、第三の特異点(=各国のグランプリ)以降は通過点的に経由されて環境解明が終わる。

以上を踏まえると、見えてくるものがある。

新エキスパンションが発売されてから一ヶ月以上が経つと、環境解明がほとんど終わっている。このため、他のプレイヤーより点数の高いデックをプレイするのは相対的に困難になる。そういう意味では、環境初期ほど差をつけやすい(=勝ちやすい)といえる。

極端な話、とりたててプレイ技術に秀でているわけではないプレイヤーでも、第一特異点の時点で第四特異点の優れたデックをプレイできれば相当、良い成績が残せるだろう。
逆にプレイ技術に秀でたプレイヤーでも、環境のデックすべての水準点が八〇点を越え、サイドボーディングやプレイングの定石が確立されている第四特異点時点では第一特異点時点より勝ちにくいだろう。

ただ、この謎解きゲームは完全情報ゲームではない。全てのプレイヤーがもっとも強力で点数の高いデックを認知し、選択するとは限らない。
各プレイヤーはさまざまな事情から、さまざまなデックをプレイする。わかっていても不利な選択をするプレイヤーもいるし、わからずに不利な選択をするプレイヤーもいる。

数あるデックの中からもっとも強力なアーキタイプを選択し、その時点での水準よりも数点高い(=少しだけ進んだ)構築を意識する。草の根レベルであれば、これだけで勝率がグッと上がる。

あくまで私の実感だが、周囲のプレイヤーより五点高いデックがあれば、PPTQレベルまでのトーナメントを勝ち抜くには十分なのではないか。ひどい事故に見舞われず、ひどいミスをしなければ、「勝つべくして勝つ」のではないか。そう考える。
もしその会場内に他よりも少し点数が高いデックがない場合、横並びのデック群の中で運やプレイ技術の合計値が高い者が「たまたま勝つ」。そんなところだ。

ここで結論をはっきりさせておく。

点数の高いデックをプレイする。これがスタンダードを攻略する方法だ。
点数の高いデックとは、ありていに言えば強いデックである。

勘違いしないでほしい。「スタンダードで勝つ方法」は「マジックが強くなる方法」と同義ではない。
重要なのは、練習量でもなくプレイングでもない。これらは大樹の先に枝分かれした種々の問題だ。「マジックが強くなる方法」であっても「スタンダードで勝つ方法」ではない。無意味ではないが、根本的な戦略にはなりえない。

それでは強いデックを発見するためにはどうすればいいのか?

いいところになってきたが、ここから別の議論になる。つづきは次回以降に書きたい。

次回、「デック構築論」。

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